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脳卒中後痺れはなぜ起こる?感覚障害の原因とリハビリ
はじめに
脳卒中後、
- 「手足がピリピリする」
- 「触っている感じが分かりにくい」
- 「感覚が鈍い」
- 「常に違和感がある」
このような痺れや感覚の異常で悩まれている方は少なくありません。
麻痺による「動かしにくさ」は周囲にも伝わりやすい一方で、痺れや感覚障害は見た目では分かりにくい症状です。そのため、本人しか分からない辛さを抱え続けているケースも多く見られます。
また、痺れは単なる「感覚の問題」だけではありません。歩きにくさや転倒、手の使いづらさ、疲れやすさにも関係します。
「ずっと治らないのではないか」
「リハビリをしても意味がないのでは」
そのような不安を抱く方もいるでしょう。
しかし、脳卒中後の痺れは、身体の使い方やリハビリによって変化がみられる場合があります。特に退院後の生活の中で、どのように身体を使うかは非常に重要です。
この記事では、脳卒中後に痺れが起こる原因、感覚障害が身体へ与える影響、リハビリでできること、日常生活で大切なポイントについて、できるだけ分かりやすく解説します。
脳卒中後の痺れとは?
脳卒中後のしびれと聞くと、多くの方は「ピリピリする感じ」をイメージするかもしれません。しかし実際には、人によって症状は大きく異なります。

痺れの感じ方は人それぞれ
「痺れ」と一言でいっても、その感じ方は人によって大きく異なります。
実際には、さまざまな症状があり、以下のような感覚を訴える方が多く見られます。
- 正座の後のようなジンジンとした感覚
- 電気が走るようなピリピリとした刺激
- 皮が一枚被っているような感覚の鈍さ
- 何かに触れても自分の皮膚ではないような違和感
- お風呂の温度や氷の冷たさが判別できない温度感覚の異常
「感覚がない」という方もいれば、「敏感すぎて痛い」という方もいます。
また、天気や疲労によって強く感じるケースも少なくありません。
麻痺と痺れは違う
よく混同されがちですが、麻痺と痺れは根本的にメカニズムが異なります。
- 麻痺:脳から筋肉への「動かせ」という指令が届かない運動の問題
- 痺れ:手足から脳への「触れた」「感じた」という情報が届かない、あるいは誤って伝わる感覚の問題
もちろん、脳の損傷範囲によっては、これら両方が同時に起こるケースも珍しくありません。「手足は動くのに、感覚がないために使いにくい」という状態は、当事者にとって非常に大きなストレスとなります。
脳卒中後の痺れは珍しくない
「自分だけがこの感覚障害に悩まされているのではないか」と不安になる必要はありません。脳卒中発症後、程度の差こそありますが、感覚に何らかの変化を感じる方は非常に多いのが現実です。また、運動麻痺はリハビリで改善が進んでも、痺れや違和感だけは慢性期(発症から時間が経過した後)になっても残りやすいという特徴があります。
脳卒中後にしびれが起こる原因
しびれの原因を理解するには、脳の役割を知る必要があります。
私たちの身体は、触られた感覚・温度・痛み・圧迫感・足裏の感覚
などを脳で感じ取っています。
脳卒中によって、その「感覚を処理する部分」が損傷すると、しびれや感覚障害が起こります。

脳の感覚を感じる部分が損傷するため
私たちの体は、皮膚などで受け取った刺激を脊髄を通って脳の「感覚野」という場所に伝えます。脳卒中によってこのルートのどこかが損傷すると、情報のバトンタッチがうまくいかなくなります。
- 情報の遮断:脳まで情報が届かず、何も感じない
- 情報の歪み:脳に誤った情報が伝わり、痺れとして認識される
その結果、感覚が鈍くなる・触られても分かりにくい・常に違和感が出るといった状態になります。
感覚の「ズレ」が起こる
脳卒中後は、感覚が完全に消えるだけではありません。
脳が感覚を正しく認識できなくなることがあります。
たとえば、少し触れただけで強く感じたり、何もしていないのにピリピリしたり、温度感覚がズレたりするケースがあります。
つまり、身体そのものではなく、「脳側の感じ方」が変化している場合も多くあります。
身体を動かさないことで悪化する場合もある
脳卒中後は、麻痺や不安によって身体を動かす機会が減りやすくなります。
すると、筋肉や関節が硬くなり、血流や感覚刺激も低下していきます。
その結果、さらに動きづらくなり、痺れや違和感が強くなるという悪循環につながるケースもあります。
中枢性疼痛が起こる場合もある
特に視床(ししょう)と呼ばれる脳の部位を損傷した場合、「視床痛」と呼ばれる強いしびれや痛みが出ることがあります。
- 焼けるような熱い痛み
- 衣服が擦れるだけで痛む
- 睡眠を妨げるほどの不快感
これは一般的な痛み止めが効きにくいこともあり、専門的なリハビリや医師による内服コントロールが必要となる分野です。
感覚障害が日常生活へ与える影響
痺れや感覚の麻痺は、目に見えないからこそ、生活のあらゆる場面で「やりにくさ」を生じさせます。
歩行が不安定になる
私たちは普段、無意識に足の裏で地面の硬さや傾きを感じ取って歩いています。
- 足裏の感覚低下による地面を踏んでいる実感が持てない状態
- バランスを崩しやすくなるふらつきの増加
- 段差を認識できずにつまずく転倒リスクの高まり
感覚が鈍いと、自分の足がどこにあるかを目で見ないと分からなくなるため、歩く際にずっと下を向かなければならず、姿勢も崩れやすくなります。
手が使いにくくなる
手の感覚も日常生活で非常に重要です。
たとえば、
- コップを持つ
- ボタンを留める
- 箸を使う
- ペンを持つ
こうした動作では、指先の感覚を使っています。
感覚が鈍くなると、力加減が難しい・物を落としやすい・細かい作業が難しいという状態になりやすくなります。
身体の位置が分かりにくくなる
目をつぶっていても自分の手足がどこにあるか分かる感覚(深部感覚)が失われると、動作の組み立てが難しくなります。座っている姿勢を維持するだけでも、脳は常に筋肉の張り具合を感知していますが、その情報が狂うと、椅子から滑り落ちそうになったり、身体が傾いたりしてしまいます。
そのため、感覚障害はしびれだけの問題ではなく、歩行や姿勢の不安定さにも大きく関係しています。
精神的ストレスにつながる
24時間、止まることなく続く痺れは、想像を絶する疲労感をもたらします。「他人に説明しても分かってもらえない」という孤独感や、常に不快なノイズにさらされているような感覚は、意欲の低下やうつ状態を招く原因にもなる可能性があります。
実際に、脳卒中後の痺れや痛みに関する研究でも、日常生活への影響だけでなく、不安や精神的ストレスにつながるケースが報告されています。
そのため、身体機能だけではなく、心理面へのサポートも重要になります。
脳卒中後の痺れは改善する?

多くの方が気になるのが、「しびれは治るのか?」という点でしょう。
結論から言うと、改善には個人差があります。ただし、慢性期でも変化がみられるケースはあります。
完全に消えない場合もある
誠実にお伝えしなければならないのは、脳の損傷の程度によっては、痺れが100%完全に消え去ることは容易ではないという事実です。しかし、「消えない=変わらない」ではありません。
脳には「学習する力」がある
人間の脳には、損傷しても新しい回路を作ったり、他の場所が補ったりする「可塑性」という素晴らしい能力が備わっています。正しいリハビリを通じて「正しい感覚の情報」を送り続けることで、脳が感覚を再学習し、痺れが和らいだり、気にならなくなったりする可能性は十分にあります。
👇脳卒中後の回復は長期的に続く可能性があることが研究でも報告されています。
出典:Hatem SM et al., Frontiers in Human Neuroscience (2016)
※英語の論文ですが、Google翻訳などを使うことで日本語でもご確認いただけます。
慢性期でも変化するケースはある
「発症から1年以上経っているから手遅れ」ということはありません。
- 適切な刺激を入れ直す
- 継続的なリハビリで神経を活性化させる
- 日常で積極的に身体を使う
これらを積み重ねることで、不快な痺れが「付き合える程度の違和感」に変わったり、動作がスムーズになったりする事例は多く存在します。
脳卒中後のしびれに対するリハビリ
感覚障害に対するリハビリは、単に揉むだけではありません。「脳に情報を正しく認識させる」ためのアプローチが重要です。
感覚入力を増やす練習
脳に「ここに手があるよ」「冷たいよ」という信号を送り、眠っている神経を呼び起こします。
- 触覚刺激:様々な素材(綿、シルク、ボディークリームなど)で皮膚をなでる
- 重さの認識:重さの違うボールを持ち比べる
- 圧覚:患部にじわーっと圧力をかける
- 温度刺激:温かいタオルや冷たいものに触れる
ただし、強く刺激すれば良いわけではありません。大切なのは「適切な刺激」です。
身体を正しく使う練習
感覚が鈍いからこそ、正しい姿勢で身体を動かす訓練が不可欠です。
- 体幹を安定させ、手足に余計な力が入らないようにする
- 歩行時にしっかりと足裏全体で荷重を感じる
- 鏡を見て姿勢を正し、視覚的な情報で感覚を補う
そのため、立つ・座る・歩く・体重を乗せるなどの基本動作を練習することが重要です。
視覚を活用した練習
感覚が届かないのであれば、目で見て確認する「視覚代償」を積極的に取り入れます。
- 自分の手の動きを目で見ながら、意図した通りに動いているか確認する
- 感覚と動作のズレを脳の中で修正していく
自主トレで大切な3つのポイント

退院後、ご自身でリハビリを続ける際に意識してほしいことがあります。実は、リハビリは「量」をこなすこと以上に、「質」が重要です。
①間違った動きを繰り返さない
脳は「繰り返した動き」をそのまま学習してしまいます。 そのため、以下のような状態で練習を続けると、かえって動きにくさが定着してしまう恐れがあります。
- 無理な力み:肩や首に余計な力が入っている
- 崩れた姿勢:体が左右に傾いたり、バランスが悪い
- 偏った使い方:特定の筋肉ばかりに頼って動かしている
「たくさんやる」ことよりも、「きれいに動く」ことを優先しましょう。
②感覚を意識しながら行う
ただ手足を動かすだけでなく、感覚を意識することが脳の再学習を助けます。
- 足裏を感じる:地面にしっかり接地しているか
- 位置を意識する:手足が今どこにあるか
- 左右差を確認する:良い側の感覚と何が違うか
「感覚」と「動作」を一致させるイメージで行うのがコツです。
③継続する
しびれは、短期間で劇的に変化しにくい症状です。だからこそ、焦りは禁物です。
「一度にたくさん」よりも「毎日少しずつ」。 脳へ新しい情報を根気強く送り続けることが、変化を引き出す一番の近道になります。無理のない範囲で、生活の中にリハビリを取り入れていきましょう。
リハビリの内容や進め方に不安がある方は、専門家に相談しながら今の自分に合ったメニューを見つけることも大切です。
自主トレに関しては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
👉自主トレを頑張ってるのに変わらない理由|脳卒中リハビリで本当に大切なこととは?
退院後の生活で重要なこと
脳卒中後は、退院後の生活が非常に重要になります。
病院ではリハビリ時間が確保されていても、自宅へ戻ると活動量が減りやすくなります。特に、「転ぶのが怖い」「疲れやすい」と感じることで、動く機会が少なくなる方も少なくありません。
動かないことで悪循環になる
活動量が減ると、筋力やバランス能力が低下しやすくなります。
さらに、身体へ入る感覚刺激も少なくなるため、動きづらさやしびれ、疲れやすさにつながる場合があります。
その結果、さらに外出や活動が減り、身体機能が低下していくという悪循環が起こります。
日常生活そのものがリハビリになる
リハビリは病院だけで行うものではありません。
日常生活の中で歩いたり、立ち上がったり、家事や外出をしたりすることも大切な練習になります。
もちろん無理をする必要はありません。しかし、身体を使う機会を少しずつ増やしていくことは、退院後の生活で非常に重要です。
日常生活の積み重ねが、身体機能の維持や改善につながることも少なくありません。
家族ができるサポート

痺れは外見では分からないため、本人と周囲で「つらさの温度差」が生じがちです。これが当事者の孤独感を深める原因にもなります。
症状を否定せず、共感する
まずは、本人が訴える感覚を「気のせい」と否定しないことが何より大切です。たとえ麻痺が軽く見えても、本人にとっては大きなストレスとなっています。
- 「見た目では分からないけれど、つらいんだね」
- 「今はどんな感じがする?」
このように、本人にしか分からない感覚を尊重し、理解しようとする姿勢が心の支えになります。
「一緒に」動く機会を作る
リハビリを本人任せにせず、日常の中で楽しみながら体を動かす工夫をしてみましょう。
- 近所への散歩:足裏で地面を感じる練習になる
- 無理のない外出:買い物などで外の刺激に触れる
- 軽いストレッチ:声を掛け合いながら一緒に行う
「リハビリをさせなきゃ」と意気込まず、「一緒に外の空気を吸いに行こう」といった気軽な誘いが、活動量を増やすきっかけになります。
まとめ

脳卒中後の痺れは、脳の損傷によって起こる感覚障害です。
見た目では分かりにくい症状ですが、歩行やバランス、手の動き、日常生活などへ大きな影響を与える場合があります。
また、「発症から時間が経ったからもう変わらない」と思われることもありますが、しびれは慢性期でも変化がみられるケースがあります。
大切なのは、適切な身体の使い方を意識しながら、継続的にリハビリや日常生活での活動を行うことです。
もちろん短期間で大きく改善するわけではありません。しかし、自分の身体と向き合いながら少しずつ積み重ねていくことで、身体の感じ方や動きに変化がみられる可能性があります。
脳卒中後の痺れや感覚障害で悩まれている方は、一人で抱え込まず、専門家へ相談しながら身体づくりを進めていきましょう。
沖縄で脳卒中後の歩行や感覚障害、身体の使い方でお悩みの方は、ぜひ 沖縄リハビリステーションNOVAまでお気軽にご相談ください。
