脳卒中 当事者向け

脳卒中発症前の前兆、初期症状は?「FAST」について

脳卒中が起きる前には前兆・予兆があるとされています。前兆や予兆の症状を知っていると、早く対処することができるので、脳卒中発症後の予後も良好になる傾向があります。今回は、脳卒中の前兆や予兆について解説していきます。

脳卒中の種類

主に脳の血管が詰まるタイプと脳の血管が破れて出血するタイプがあります。

血管が詰まるタイプ

脳梗塞

脳の血管が詰まる病気として、最もよく知られているのが脳梗塞です。動脈硬化に伴う血管の狭窄、血栓などを原因として発症します。身体の片側の麻痺、身体に力が入らない、呂律が回らない、めまい、視覚障害などの症状がみられます。

一過性脳虚血発作(TIA)

脳梗塞の前兆としてよくみられる発作です。原因・症状は脳梗塞と似ています。病名にある通り、症状が24時間以内(多くは1時間以内)に治まる一過性ものです。TIAは脳梗塞と同じ症状が一時的に現れるもので、数分~数十分程度で消えることが多く、脳卒中の前兆と気づかないこともあります。TIA発症後90日以内に15~20%の割合で脳梗塞になるリスクがあるため、短時間で収まったからといってそのままにせず、早期受診で脳卒中を予防することが大切です。一過性脳虚血発作の治療は、脳梗塞の予防という意味でも重要です。

血管が破れて出血するタイプ

脳出血

脳動脈が破れて出血が起こる病気です。高血圧などに伴う動脈硬化の進行が主な原因です。突然の強烈な頭痛、身体の片側の麻痺、吐き気や嘔吐、意識障害などの症状が見られます。

くも膜下出血

脳を覆う「くも膜」の内側で出血が起こる病気です。脳動脈の一部がこぶ状になる「脳動脈瘤」の破裂をきっかけに発症します。そして、その脳動脈瘤は、動脈の壁が弱いなどの先天的な要素と、生活習慣病に伴う動脈硬化の進行が重なって引き起こされます。ガツンと殴られたような強い頭痛、吐き気・嘔吐、意識障害などの症状が見られます。脳動脈瘤は、CT検査で早期発見することが可能です。未破裂のうちに治療を行うことが、くも膜下出血のリスクを軽減することに繋がります。

脳卒中の前兆・初期症状は?「FAST」について

  • 呂律が回らない、言葉や人の名前が出てこない
  • 片側の手や足に力が入らない、片足を引きずっている
  • 顔面の左右どちらかに運動麻痺が起こる
  • 経験したことのないほどの突然の激しい頭痛
  • 片目が見えない、視野が欠ける、物が二重に見える
  • 急なめまい、真っすぐ歩けない

これらの症状が突然起こるのが脳卒中の特徴です。数分で治まることもありますが、すぐに医療機関で受診しましょう。

また、「FAST(ファスト)」という言葉も覚えておきましょう。これは、発症を疑ったらすぐに病院へ!という「早い」の意味も込められています。

  • F=FACE 表情に異変を感じる、顔の左右で表情が違う
  • A=ARM 腕が思うように動かない、痺れる
  • S=SPEECH 思うように言葉が出てこない、呂律が回らない

最後のTはタイムで、発症時の時間を覚えておくことが重要です。FASのうち、症状が1つだと72%、3つすべてだと85%以上が脳卒中の可能性があるとされています。

また、体調が悪いと早く寝てしまう、という方がいらっしゃいますが、脳卒中が始まっていた場合、朝になると全く起き上がれないなど、夜間に症状が進行してしまう可能性が高いです。上述の予兆があれば、勘違いでもなんでも構わないので、できるだけ早く医療機関を受診することが大切です。

脳卒中を予防するために気をつけること

脳卒中を予防するためには、以下のような脳卒中の危険因子を回避するのが有効です。生活習慣病がある方はその治療を、喫煙・飲酒習慣がある方は禁煙・禁酒をしましょう。脳卒中は、「突然起こる=防げない病気」ではなく、努力次第で防ぐことができます。

高血圧

血圧が、140/90mmHg以上を指している状態です。それ以下であっても、血圧が高めの方はリスクが高くなります。高血圧によって、脳を含めた全身の血管の負担が大きくなります。負担が大きくなると、血管は弾力を失い脆くなり、狭窄をきたし、破れたり詰まったりしやすくなります。
食事では、特に塩分の摂取量に注意しましょう。

糖尿病

食生活の欧米化、摂取カロリーの増加などにより、糖尿病の方が増えています。食事を規則正しく、1日3回取り、糖質や脂質を摂取し過ぎないように注意してください。

脂質異常症

血中の中性脂肪やLDLコレステロールの値が高い、あるいはHDLコレステロールが低い状態のことを指します。特に“悪玉コレステロール”と呼ばれるLDLコレステロールの値が高い方は、脂肪の摂取を減らす必要があります。豆類や芋類、海藻類、キノコ類、根菜類などはコレステロール値を下げる効果があるため積極的に摂取することが推奨されています。

不整脈

不整脈は、早かったり遅かったり、規則正しくない脈の総称です。不整脈によって心臓や血管に負担がかかり、血栓が生じ、それが脳へと移動して詰まってしまうことがあります。(脳梗塞)抗凝固薬の使用により、血栓が生じるのを防ぐことができます。

喫煙習慣

ニコチンには、血圧を上昇させたり、動脈硬化を進行させたりといった健康への悪影響があります。他の生活習慣病の原因にもなりますので、禁煙が推奨されます。

まとめ

脳卒中には、脳の血管が詰まる脳梗塞、一過性脳虚血発作(TIA)と、血管が破れて出血する脳出血、くも膜下出血があります。脳卒中の前兆症状には、

  • 呂律が回らない、言葉や人の名前が出てこない
  • 片側の手や足に力が入らない、片足を引きずっている
  • 顔面の左右どちらかに運動麻痺が起こる
  • 経験したことのないほどの突然の激しい頭痛
  • 片目が見えない、視野が欠ける、物が二重に見える
  • 急なめまい、真っすぐ歩けない

などがあります。また「FAST」を知っていると良いです。

  • F=FACE 表情に異変を感じる、顔の左右で表情が違う
  • A=ARM 腕が思うように動かない、痺れる
  • S=SPEECH 思うように言葉が出てこない、呂律が回らない
  • T=TIME

体調に異変があったときに、これらの症状がないかを簡易的に確認し、疑わしい場合はすぐに医療機関を受診しましょう。

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