脳卒中 当事者向け

脳出血・脳梗塞後の運動障害・関節可動域制限の原因とその治療と対処法(リハビリテーション)

脳出血や脳梗塞後に、 歩きにくさや 動きにくさなどの「運動障害」が起きたり、 股関節や肩の関節が動かしにくい「関節可動域制限」が生じることがあります。 これらの運動障害や関節可動域制限はなぜ起こるのでしょうか。

脳出血と脳梗塞とは

「脳卒中」は、脳血管の障害により脳の機能が失われる病気の総称であり、厳密には脳卒中には「脳梗塞」と「脳出血」とがあります。脳梗塞は高血圧が長く続くことによって動脈硬化が進行し、脳の血管が詰まったり、心臓でできた血栓が脳に詰まることで起こります。また、高血圧によって脳の血管が破れると脳出血が起こります。脳の血管に動脈瘤(血管のコブ)ができ、破裂するとくも膜下出血になります。

脳梗塞では詰まった血管の先の脳の細胞が壊死し、脳出血では出血が広がった部分の脳細胞がダメージを受けます。主な脳卒中の症状として、

  • 半身麻痺(片麻痺)
  • 言語障害
  • しびれ(感覚異常)
  • 認知障害
  • 意識障害

などの症状がみられます。

初期の小さな梗塞や出血の場合は、早期の治療により後遺症なく改善することもありますが、多くの場合は身体の麻痺、言語障害、認知障害などの後遺症が残ります。

脳出血・脳梗塞の運動障害の原因

片麻痺は、脳の損傷で体の片側が動かなくなる症状を指します。この損傷は梗塞により脳の血流が途絶えたり、出血により一部が損傷することが原因です。片麻痺の主な原因となるのは、大脳の運動野と呼ばれる部分です。

この運動野が損傷すると、障害された脳と反対の片側の筋肉の動きが制御できなくなります。結果的に、筋肉が異常にこわばったり、逆に弛緩し過ぎたりするために、適切なタイミングで適切な筋肉の収縮ができなくなってしまいます。そうすると、普段運動するときは、複合的に、様々な筋肉を様々なタイミングと強さで協調(協調運動)させて運動を作り出しますが、それがバラバラになってしまうため、思った通りの運動ができなくなってしまいます。

それ以外にも、脳卒中による認知や知覚の問題は、身体の位置や環境を正確に把握する能力に影響を与え、動きを調整するのが難しくなり、運動範囲が制限されることがあります。

脳出血・脳梗塞の関節可動域制限の原因

関節拘縮は、関節を取り囲む筋肉、腱、靭帯が短くなったり締まったりすることで、運動範囲が制限される状態です。筋力の不均衡や長期間の不動などが原因で、脳卒中患者に関節拘縮が発生することがあります。

また、痙縮は、筋緊張が増加し、硬さが生じる脳卒中患者にみられる症状です。筋収縮を引き起こし、患部の手足が動かしにくくなり、運動範囲が制限されることがあります。結果的に不動を引き起こし、関節可動域制限が発生します。

脳出血・脳梗塞の症状

片麻痺は、脳の特定の部位が損傷することで、体の片側にさまざまな症状が現れます。これらの症状は、損傷の位置や範囲によって異なるため、一概には言えませんが、以下は代表的な症状です。

顔の歪み

脳の損傷が顔の筋肉を制御する部分に影響を及ぼすと、口角が下がったり、目が閉じにくくなったりすることがあります。これは、特に笑ったときや話すときに顕著になります。

手足に力が入らない

片麻痺の典型的な症状として、手や足に力が入らなくなることが挙げられます。これにより、持ち物を落としやすくなったり、歩行が困難になったりします。

話すのが難しい

脳の損傷部位が言語を制御するエリアに近い場合、言葉を選ぶのが難しくなったり、言いたいことがうまく伝えられなくなることがあります。

感覚の異常

皮膚の感覚が鈍くなる、または過敏になることがあります。

片麻痺の症状は、上記のように多岐にわたります。症状が現れた場合は、早急に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

脳出血・脳梗塞の治療・対処法(リハビリテーション)

脳卒中後のリハビリテーション内容は、疾患を考慮するだけではなく、

  • 身体能力
  • 認知能力・ 意欲
  • 患者様の社会的状況(家庭または仕事、人間関係の状況など)

などを総合的に鑑みて考慮され、実施されます。

二次障害(拘縮や筋萎縮、廃用症候群など)を予防し,抑うつ(脳卒中患者はうつ症状を発症しやすいことも知られています)を回避するのを助けるために,患者様が医学的に安定したら直ちにリハビリテーションを開始します。意識が完全に回復し、神経脱落症状の進行を認めなければ、通常、発作後48時間以内には起き上がって座ることが可能となります。その頃からリハビリテーションを開始する場合が一般的です。

片麻痺の方にとって、実際の日常生活での機能回復や生活の質の向上を目指すためには、リハビリテーションは不可欠です。

リハビリテーションの目的

リハビリテーションには共通する以下の目的があります。これを前提として、その方個人のパーソナリティや社会生活を考慮した上で、さらに個別具体的な目標を立て、患者様とセラピストが同じ目標を共有しながら治療を進めていきます。

身体機能の回復

リハビリテーションを行うことで、失われた身体機能や筋力を取り戻すことが期待できます。例えば、歩行が困難だった方が、リハビリを通じて再び歩けるようになるケースも多いです。

日常生活の自立

リハビリは、食事や着替え、トイレなどの日常生活動作を自分で行えるようにするためのトレーニングも含まれます。これにより自立をサポートし、より充実した生活を送ることができます。

精神的なサポート

脳卒中は、身体的な影響だけでなく、精神的な影響も及ぼすことがあります。自信を取り戻す手助けとなり、前向きな気持ちで治療に取り組むことができます。リハビリテーションは、脳卒中片麻痺の患者が再び健康で充実した生活を送るための鍵となります。適切なリハビリを受けることで、多くの方が日常生活の中での大きな改善を実感しています。

運動療法

運動麻痺のある方の体の再教育および協調運動訓練は、できるだけ早期に開始します。関節可動域を維持するため、すぐに自動的および自動介助的関節可動域訓練も開始します。歩行の異常は、多くの因子(運動麻痺や筋力低下、痙性、身体バランスの歪み)によって引き起こされています。そのため修正は困難であることに加え、歩行姿勢を矯正しようとすることにより痙性が増大したり、転倒リスクを増大させる可能性もあります。安全かつ快適に歩くことができる限り、歩行姿勢の矯正は推奨されていません。歩行練習の目標は、正常な歩行姿勢を取り戻すことではなく、安全な歩行を確立し、維持することになります。

日常生活動作練習

また、全てのリハビリの目標が元の生活に戻ることをベースにしている以上、様々な日常生活動作(トイレで排泄を行う動作、ベッドから起き上がる動作など)を訓練する必要があります。また動作練習を通して、元の生活へ戻る意欲が高まったり、活動量が増えることで筋力・心肺機能の維持・向上に繋がります。

CI療法、ロボット療法など追加的な治療法

脳卒中患者に対する追加的な治療法としては以下のものが考えられます。

非麻痺側上肢抑制療法(Constraint-induced movement therapy:CI療法)

特定の活動を行う場合を除き、起きている間は健側の上肢を拘束することで,主に患側の上肢で作業を行うことを強制します。

ロボットによる療法

ロボット装置を使用して、治療的な動作を集中的に繰り返し行い,患肢による動作の遂行を誘導、患者に対するフィードバックを行い、患者の進歩を評価する治療法です。

部分荷重歩行訓練

患者の体重を部分的に支持する器具(トレッドミルなど)を用いて歩行練習を行います。支持する体重と歩行の速度を調整できます。安全に歩行練習しながら、歩行に必要な補助を加えることができます。

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