脳卒中後遺症当事者の方にとって、片麻痺は生活に大きな制限を与える可能性があります。しかし、リハビリテーションを積極的に行うことで、片麻痺を克服し、日常生活への復帰が期待できます。自宅でのリハビリは病院でのリハビリと同様に重要であり、日々の小さな取り組みが回復に繋がることが多いです。
今回は、脳卒中後の片麻痺に対する自宅でできるリハビリメニューや、リハビリを効果的に続けるためのポイントを解説します。
脳卒中後の片麻痺とは?
脳卒中は、脳の血管が詰まったり出血したりすることによって引き起こされる病気です。脳卒中の影響を受けた側の脳の反対側の身体に麻痺が生じることがあり、これを片麻痺と呼びます。片麻痺は、手足の動きが困難になるだけでなく、感覚の低下や筋力の減少も伴い、日常生活に大きな影響を与えます。
片麻痺の症状
- 動作の制限:手や足が思うように動かせなくなるため、歩行や物をつかむといった日常的な動作が困難になります。
- 筋力低下:使わない筋肉は時間とともに萎縮し、筋力がさらに低下します。これは「廃用症候群」とも呼ばれ、リハビリが重要な理由の一つです。
- 感覚の鈍化:片麻痺の側の感覚が鈍くなるため、痛みや温度の変化に気づきにくくなります。
自宅でのリハビリの重要性
病院やリハビリ施設でのリハビリは、脳卒中の回復に大きな役割を果たしますが、自宅でのリハビリもそれと同等に重要です。特に、片麻痺の回復過程は長期間にわたることが多く、自宅でのリハビリを習慣にすることが重要です。自分のペースで取り組むことができ、日常生活の中に取り入れやすいという利点があります。
自宅リハビリのメリット
- 継続性:毎日少しずつでもリハビリを行うことで、回復が加速しやすくなります。自宅でのリハビリは、生活の一部として取り組むことが可能です。
- 経済的な負担軽減:自宅でのリハビリは基本的に無料で行えるため、経済的に実行しやすいです。
- 心理的な安心感:慣れ親しんだ自宅でのリハビリは、施設や病院でのリハビリに比べて心理的負担が少なく、リラックスした状態で行うことができます。
自宅でできるリハビリメニュー
脳卒中後の片麻痺リハビリは、段階的に取り組むことが大切です。以下では、上肢(腕・手)、下肢(足)、およびバランス改善に焦点を当てたリハビリメニューを紹介します。各メニューは、自宅で手軽にできるものばかりですので、無理をせず自分のペースで続けていきましょう。
1.上肢(腕・手)のリハビリ
片麻痺の影響を受けた腕や手の動きは特に回復が遅くなることが多いです。以下の運動を日常的に行うことで、腕や手の機能回復を促します。
- タオルを使った腕の伸ばし運動
- 椅子に座り、両手でタオルの両端を持ちます。腕を肩幅に広げ、ゆっくりと前方に伸ばしていきます。
- 次に、腕を頭の上まで持ち上げ、その状態を5秒間保持します。無理をせず、肩や腕の筋肉を伸ばして柔軟性を高めます。
- これを1日10回繰り返します。
- 手指のストレッチ
- 片麻痺のある手をゆっくりと握り、次にゆっくりと、できるだけ大きく開きます。筋肉が硬くなっている場合は、無理をせず少しずつ動かすことが大切です。
- 1セット10回を目安に、1日3セット行います。手指の筋肉をほぐし、手の動きを改善します。
2.下肢(足)のリハビリ
歩行練習が難しい場合でも、以下のリハビリを続けることで足の筋力や関節可動域を徐々に改善することが期待できます。
- 足首のストレッチ
- 椅子に座り、片麻痺のある足を前に伸ばします。つま先を上下にゆっくりと動かし、足首の柔軟性を高めます。
- 踏み台昇降運動
- 安定した踏み台を用意し、片麻痺の足を踏み台に乗せて昇降運動を行います。最初はゆっくりと行い、徐々に動作を大きくしていきます。
- 1セット10回を目標に、1日3セット行います。足の筋力を鍛え、歩行時の安定性を向上させます。
3.バランス改善のリハビリ
脳卒中当事者の方は、片麻痺の影響により身体のバランスが取りにくくなることがあります。バランスを改善するためのリハビリを行うことで、動きやすく、日常生活での転倒リスクを減らすことができます。
- 片足立ち練習
- 椅子や壁を支えにして立ち、片麻痺の足を軸にして片足で立ちます。この状態を5秒間保持し、次に反対側の足も同じように行います。この時に体を傾けず、真っ直ぐに保つことがポイントです。
リハビリを継続するためのポイント
自宅でのリハビリは、短期間で大きな効果を期待するものではなく、継続して行うことが重要です。以下のポイントを押さえることで、モチベーションを維持しやすくなります。
- 小さな目標を設定する
- 「今日は腕を5回伸ばす」「足首のストレッチを10回行う」など、小さな目標を設定しましょう。達成感を得ることで意欲が続きやすくなります。
- 家族や知人・友人のサポートを得る
- リハビリは一人で行うと孤独を感じることがあります。家族や友人にサポートしてもらい、一緒に取り組むことで継続しやすくなります。
- リハビリの時間を習慣化する
- 日々の生活の中にリハビリを取り入れ、毎日同じ時間に行うことで、習慣化してしまうと楽に継続することができます。
自宅リハビリを安全に行うための注意点
自宅でリハビリを行う際は、安全面にも十分に配慮する必要があります。特に、バランス感覚が低下している場合は、転倒や怪我のリスクが高くなります。
- 立って行うリハビリメニューは、転倒予防のために、必ず手で支持物を持つようにして行なってください。
- ストレッチは関節や筋肉に過剰な負担をかけ過ぎないように適度な伸長感(伸ばされている感覚)がある程度で行いましょう。
- 痛みを感じる場合はすぐに運動やストレッチを中止してください。
- 普段の血圧が高めな方は「りきむ動作」をすると血圧が上がる可能性があります。力を入れる動作をする場合は、呼吸を意識して、息を止めないように行なってください。
まとめ
脳卒中後の片麻痺リハビリは、日々の積み重ねが回復への重要なカギとなります。自宅でのリハビリを継続することで、機能の改善や生活の質の向上が期待できます。上肢、下肢、バランスのリハビリを取り入れ、無理のない範囲で取り組むことが大切です。また、小さな目標を設定してモチベーションを維持し、家族や専門家のサポートを得ながらリハビリを続けましょう。自宅でのリハビリは、回復のスピードを促進し、より良い日常生活を取り戻すために重要なステップです。少しずつでも継続することで、身体の変化を感じ、日常生活がより快適になっていくはずです。
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