脳卒中 当事者向け

脳卒中のリスクが低下し、予防できる食事と栄養とは?

当院では、管理栄養士と密接に連携し、脳卒中の方の「運動・身体」だけでなく、「栄養や食事」の面から、総合的な観点で、脳卒中当事者の方々の「できるようになりたい」を応援しています。

実際、脳卒中は、偏った食事や運動不足、ストレス、喫煙、過度の飲酒といった生活習慣の乱れと、その延長線上にある高血圧や糖尿病、脂質異常症、心臓病などの病気が発症の大きな原因になっています。こうした危険因子は合併することも多く、2つ3つと重なるにつれ、脳卒中の発症率(再発率)はぐっと高まります。そのため脳卒中を防ぐ(再発も含む)には、食事を中心とした生活習慣の改善が不可欠です。

脳卒中のリスクを高める主な要因①高血圧

脳卒中の直接の原因は高血圧です。脳卒中は、脳の血管が詰まる脳梗塞と、脳の血管が破れる脳出血、くも膜下出血といった脳血管障害を指します。それぞれ病態は異なりますが、高血圧による動脈硬化はどの疾患においても主要な原因です。

血管壁に圧力がかかる高血圧の状態が続けば、血管壁が厚みを増して動脈硬化となり、進行すると、血管が詰まったり破れたりしやすくなります。こうした状態を防ぐには、血圧を正常値内(収縮期血圧120㎜Hg程度・拡張期血圧80㎜Hg程度)に抑える必要があります。特に、脳出血を予防するには、血圧のコントロールが最重要課題です。

一番簡単な高血圧対策は、塩分の摂取量を減らすことです。

動脈硬化の進行を止めるには1日の塩分摂取量を10g以下に抑える必要がありますが、日本人の平均摂取量は14gになっています。目標値をクリアするには、食材に元から含まれている塩分だけでなく、調味料、しょう油やドレッシングなどにも注意が必要です。柑橘類の酸味や香辛料、だしなどを活用して味に深みを加えるようにしたり、食卓の調味料は「かける」のではなく、一度小皿に出しておいて、少しだけ「つける」ようにすると摂取量を減らすことができます。

脳卒中のリスクを高める主な要因②肥満

肥満を防ぐことも脳卒中予防に効果的です。過剰な糖質(炭水化物)は中性脂肪となって体内に貯えられるばかりでなく、内臓に付いた内臓脂肪からは糖尿病や高血圧を引き起こす物質や血栓を作るホルモンが分泌されます。肥満状態の判断には、国際的な基準のBMI「体重(㎏)÷身長(m)の2乗」が広く用いられており、日本肥満学会では、統計的に最も病気にかかりにくい22を標準とし、25以上を肥満としています。BMI値20~22を目指して、減量することで脳卒中を効果的に予防できます。BMIはサイトでも簡単に計測できるので、ネットで検索してみてください。

コレステロールも摂り過ぎに注意します。コレステロールの中でも悪玉と言われるLDLは動脈硬化を引き起こすばかりでなく、糖や脂質と結合して酸化変性し、ドロドロの状態で血管壁に付着して徐々に血管の内径を狭めていきます。その結果、血液の流れが悪くなるばかりでなく、血栓ができやすくなります。

脳卒中を予防する食事法

脳卒中は食生活との関係が深い疾患です。そのため、予防するためには普段から食事に気をつけておく必要があります。では、具体的にどのように気をつけたらよいのでしょうか。

①主食・主菜・副菜・汁物を揃えて食べる

基本は1日に3食です。朝はあまり食欲がないという方は、果物だけでも構いません。
主食と主菜、副菜、汁物を合わせた一汁三菜を心がけて食事をしましょう。当然ですが、肥満も高血圧をはじめ、万病の原因となるため、お腹いっぱいに食べず腹八分目にとどめておくことも大切です。
※一汁三菜とは、おかずと汁物に3つのおかずを足したものです。

②塩分を控えめにする

上述のように、塩分の摂りすぎは血圧を上げる大きな原因です。高血圧を予防するためには、1日の塩分摂取量を6g未満に抑えることが推奨されています。しかし、日本人の平均摂取量は11〜12gもあるとされています。ほとんどの方が塩分摂取量を普段の半分ほどにまで減らす必要があります。

塩分はみそやしょうゆ、ソースなどの調味料のほか、加工食品に多く含まれていることが特徴です。みそ汁や漬物を1日に1回程度に抑え、醤油の代わりにポン酢や香辛料をうまく使って調理することがおすすめです。

③動物性脂肪の過剰摂取に注意する

脂肪を摂る割合が増えると、動脈硬化を起こしやすくなることがわかっています。とくに動物性の脂肪に多く含まれているコレステロールは、動脈硬化を進める原因になります。成人では脂肪から摂るエネルギーの割合は20〜25%が適正だと言われています。

摂取率が上がると動脈硬化だけでなく乳がんや大腸がんによる死亡率も上がるとされているため、できるだけ油っぽい食事は避けるようにしましょう。魚に含まれている不飽和脂肪酸は、肉に多い飽和脂肪酸と比べてコレステロール値を減らす効果があるため、肉ではなく魚を摂るように心がけることも大切です。

脳卒中の予防に効果的な栄養素

脳卒中の予防には食事の仕方に気をつけることが大切ですが、どういった栄養素を摂るかどうかも予防に大きく関係しています。血圧を下げる効果のある栄養素や食べ物をうまく取り入れて、脳卒中が起こりにくい血圧を目指すことが大切です。

①DHA・EPA

DHAやEPAは血液をさらさらにしたり、悪玉コレステロールの値を下げたりする働きがあります。これにより、血栓を予防したり、中性脂肪を減らす効果があります。DHAやEPAはサバやサンマなどの青魚に多く含まれています。

②ビタミンC

ビタミンCは美容で有名ですが、抗酸化作用があることも特徴です。脳の酸化ストレスを抑えることで、動脈硬化が原因で起こる脳卒中を予防できる効果が期待されています。

③食物繊維

食物繊維は整腸効果があることで有名ですが、実はコレステロールの値を下げる働きもあります。胆汁酸の排泄を促進することで、血中のコレステロール値を下げます。生活習慣病の発症を予防するためには18〜64歳の男性で1日に21g以上、女性で18g以上が目安となります。普通に食べていると、ついつい不足しがちな食物繊維も積極的に摂るようにしましょう。

まとめ

脳卒中は食生活や生活習慣の改善によって再発を防いだり、予防しやすくなります。一汁三菜を心がけ、塩分や動物性脂肪を摂りすぎないようにしましょう。DHAやEPA、ビタミンCや食物繊維を積極的に摂ることも予防に効果的です。食生活の改善は脳卒中だけでなく全ての疾患、心疾患やがんの予防にもつながるため、健康のためにもぜひ見直しをしましょう。

脳卒中のリハビリにおいても、リハビリを受ける・運動するだけでは不完全であり、食生活などの生活習慣全般(睡眠や排泄、ストレス管理なども含む)を見直すことも重要です。ぜひ一緒に改善を図っていきましょう。

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